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【誓い―球児たちの夏―】 2023年7月7日付読売新聞茨城版

「楽しむ覚悟」胸にプレー 伊奈

「ぶれるな!まだまだ!」「そうそう!」。体幹強化などに使うメディシンボールで練習していた3年生に、1年生が声を掛ける。伊奈の野球部に敬語は存在しない。1年生が先に帰っても、誰も気にしない。そこにあるのはただ野球を楽しむ選手たちの姿だ。

 筑波大出身で、2019年に監督に就任した藤田大輔監督のモットーは「リスペクト・ベースボール」。26人の選手たちは相手のファインプレーにも「ナイスガッツ!」などと声を上げる。

 「野球を楽しんでほしい」という指揮官の願い通り、練習でも選手たちは笑顔が絶えず、活発な意見交換が生まれる。二塁手の増田陸人(3年)は、同じ二塁手の清水太陽(2年)によく助言を求める。増田は「清水は自分よりゴロの捕球がうまい。教えてもらえてうれしい」と話す。また、公立校の部活動改革の一環で土曜は学校の練習がなくなったが、希望する選手は社会人チームの練習に参加。密度の濃い練習で力を磨いた。

 「野球は勝ったほうが楽しい。まずは競る試合を目指す」と藤田。夏の目標は「3試合以上戦いGoodGameを達成する」こと。胸に「楽しむ覚悟」を抱く選手たちのプレーはきっと、新鮮な風を茨城の高校球界に届ける。

 

【青春譜】 2023年7月14日付読売新聞茨城版

 ピンチになると、すかさずベンチから声が飛んだ。「帽子とって、裏見ろ!」。マウンドでその声に呼応すると、曇っていた表情が再び明るくなった。

 運動は苦手だったが、父・貴仁さん(48)とのキャッチボールを機に中学で野球を始めた。高校は「リスペクト・ベースボール」がモットーの伊奈へ。1年冬に左ひざの靱帯を痛め、三塁コーチを買って出た2か月で「控え選手や周囲のサポートがあって野球ができるありがたみを知った」。試合でプレーする選手だけが野球ではないと強く感じた。

 だから、最後の夏はチーム全員で戦いたかった。1年生からの寄せ書きで埋まったアンダーシャツを着て、つばの裏に2、3年生全員の名前が並ぶ帽子をかぶり、懸命に左腕を振った。

 ただ、甲子園出場経験もあるシード校は何枚も上手だった。二回、苦手なフィールディングにつけ込まれ、連続でセーフティーバントを決められるなど3失点し、この回途中で降板した。

 試合中、劣勢でも仲間たちは相手の好プレーにまで拍手を送った。そんな野球が大好きだから、大学でもプレーを続ける。「自分でもびっくりだけど、さらに野球の楽しさを実感できた3年間だったので」。そう言い切る表情は、充実の高校野球人生を物語っていた。